FAQ一覧

Q01.事前混合処理工法の改良原理を教えてほしい。

A01.
事前混合処理工法では、セメント系の安定材が用いられます。
改良原理は、土砂と安定材との化学的固化に基づき、埋立てに用いる土砂(母材)に粘着力を付加するものです。粘着力の付加は、安定材の水和反応とその後長期にわたって継続する化学的反応に依存しています。
安定材を添加・混合した処理土を直接水中に投下するために、分離防止剤を、安定材が土粒子表面に付着した後に添加します。土粒子と安定材の混合体を分離防止剤が被覆することにより、水中での安定材の分離を防止しています。

Q02.事前混合処理工法の適用土質は?

A02.
事前混合処理工法の対象となる埋立土砂(母材)は、主に砂の含有量が80%以上の砂質土を対象としています。これは、母材によって処理土の工学的特性が著しく異なるためです。
最近では砂の含有率が60%程度の施工実績があり、従来と同様な設計・管理を行うことで品質が確保できることが確認されています。
ただし細粒分、粗粒分の多い土、シラスなどの特殊土は、一般の砂とは異なる性質を持つことが知られていますので、適用に際しては処理土の工学的性質を確認しておく必要があります。

Q03.混合方法の種類と選定方法を教えてほしい。

A03.
混合方式は4方式に分けられ、使用する埋立土砂、規模、工期および経済性を考慮して選定します。

1)ベルトコンベアの乗継ぎを利用した混合方式
埋立材料が砂質土で含水比15%以下程度の場合に、加水を行わずに安定材と分離防止剤を添加・混合する方法です。
 特長としては、
 ①少ないエネルギーによって効率的な混合が可能
 ②セメントの飛散が防止される
 ③大量かつ連続的な混合が可能
等の利点があり、機械練り方式と同等の効率が得られます。

2)自走式土質改良機を用いた方式
施工数量が少ない場合には、実績が多いです。
 特長としては、
 ①土砂ホッパや安定剤ホッパが一体型として組み込まれており、
  組立・解体費、運搬費が安価
 ②ベルトコンベア方式より狭い面積で混合処理が可能

3)ロータリードラム型ミキサやスクリュー型ミキサを用いた機械練り方式
浚渫土砂や掘削土砂等のように、比較的含水比の高い土砂の場合にはベルトコンベア方式による混合が困難なため、機械練りミキサによる混合方式が使用されます。混合方式が異なる以外はベルトコンベア方式と同等の効率が得られますが、埋立土砂の適用範囲は最大粒径が約50mm程度以下です。

4)回転式破砕混合機を用いた方式
礫等の混入により、事前に破砕処理やふるい分け処理が必要となる場合や高含水比の埋立土砂の場合には回転式破砕混合機を使用します。
 特長としては、
 ①軟岩程度の強度であれば、破砕と同時に混合が可能
 ②混合をチェーン回転にて行うため、比較的高含水比の材料でも混合効率が良い。
等があげられます。

Q04.各混合方式の処理能力は?

A04.
以下の値は、一般的な処理能力を示しています。

①ベルトコンベアの乗継ぎを利用したベルトコンベア混合方式
 時間当たり100~250㎥
②自走式土質改良機による混合方式
 時間当たり50~80㎥
③ロータリードラム型ミキサやスクリュー型ミキサを用いた機械練り方式
 時間当たり50~300㎥
④回転式破砕混合機による方式
 時間当たり50~200㎥

Q05.混合場所の種類と選定方法を教えてほしい。

A05.
安定材を混合する場所としては、土砂採取場の土砂積み出し設備を利用して行う方法(陸上混合方式)、海上に設けたプラント船で行う方法(海上混合方式)、その他の方法として埋立地内に混合設備を設ける方法などがあります。

①陸上混合方式
陸上混合方式は、既設の設備に対して安定材供給設備等を付加することにより使用できるため、コスト的に有利です。しかし、処理土は混合直後から凝結が始まるため、運搬時間が長くかかる(2時間以上)場合には慎重な計画が必要です。

②海上混合方式
海上混合方式は、混合後直ちに直投が可能であるため、強度低下のおそれがないことや土砂積み出しプラントが限定されないなどの利点があります。しかし、新たな混合設備の追加が必要であるため、陸上混合方式に比べてコスト的にはやや高くなります。

③その他の方式
埋立地内に混合設備を設ける方法は、埋立地内の土砂のストックパイルや混合設備を設けるスペースがある等の条件が整った場合に適用できます。長所としては混合後直ちに直投が可能であり、土砂積み出しプラントが限定されないなどの利点があります。しかし、土砂の積み替えや新たな混合設備を設けるなどコスト的にはやや高くなります。

Q06.投入・埋立方法の種類と選定方法を教えてほしい。

A06.
投入・埋立には以下の方法があります。
① まき出し方式
② シュート方式
③ クラムシェル方式
④ 底開式バケット方式
⑤ ベッセル方式

①はブルドーザやバックホウなどによる陸上部からの施工であり、浅水域や小区域の埋
立に適用されます。
②は水深が深い場合に適用され、減勢部を持つシュート下端を常時地盤面近くに維持することで先端から放出される処理土の密度流による渦動拡散に起因する周辺水域の汚濁の防止に効果的です。
③は礫を含む場合や水深5.0m 以上の場合で処理土の分離が懸念される場合に有効であり、水深5.0m 以上の場合はこの方法を標準とします。クラムシェルで埋め立てる際には、処理土の分離を防止し、密度の増加を図ることが強度向上に繋がるため、地盤面までバケットを確実に下ろした後に処理土を埋め立てますが、さらに埋め立てた後に再度バケットを埋め立てた処理土にあずけることが密度増加に有効です。
④は③と同様であるが、埋立規模が大きい場合や含水比の極めて高い処理土の埋立に採用します。
⑤は処理土のストックスペースが設置できない船上プラントによる施工時や、水深が深く投入効率を上げる必要がある場合に有効です。
また、水深が大きい場合の埋立に際しては同一箇所での連続的な投入・埋立は避け、横
断方向,法線方向に順次移動しながら、1 層ごとに仕上げていく段階施工を行う必要がある。

Q07.試験工事は必要ですか?

A07.
これまで事前混合処理工法での実績がない埋立土砂(原料土)を使用する大規模工事の場合には,本工事に先立ち試験工事を行うことが望ましいです。
試験工事は、室内配合試験によって予め設定された数種類の配合を用い、計画した混合設備、施工機械、施工方法とおりに行い、目標とした強度等が得られるかを調べ、施工配合、施工法、施工管理、歩掛などの詳細を把握もしくは確認することを目的とします。主な調査・試験項目は以下の通りです。

①埋立材の特性試験
②材料の計量調査
③安定材添加率の調査
④埋立出来形の調査
⑤処理地盤の調査・試験

Q08.事前混合処理工法の設計の考え方を教えてほしい。

A08.
①土圧低減効果、円弧滑り等の地盤の安定化としての目的の場合
処理土をc-φ材として取り扱い、主として安定材添加による処理土の粘着力の増加を期待し、構造物および地盤が安定するように処理土の強度(粘着力)を決定します。詳細は「事前混合処理工法技術マニュアル」を参照下さい。

②液状化防止としての目的の場合
液状化しない材料になるよう処理土の強度を決定します。一軸圧縮強さを処理土の強度の指標とし、その値は安全側を考慮して、100kN/m2以上とすることを標準としています。このときの安定材添加率は約5%を目安とすることができます。詳細は「事前混合処理工法技術マニュアル」を参照下さい。

Q09.処理土の配合設計はどうするのか?

A09.
処理土の配合設計は、設計基準強度を満足するためのセメントの種類と添加率等を決定することを目的として実施された室内配合試験をもとに、施工性を考慮し最終的な施工配合を決定します。また、必要に応じて試験工事を実施し、配合設計を決定します。

①室内配合試験
室内配合試験の目的は、処理土の強度と安定材添加率の関係を求め、処理土の必要強度が得られるための安定材添加率等を決定することです。処理土の強度と安定材添加率の関係は、土の種類、密度等の条件に大きく影響されるため、配合試験時は現場条件と類似となるよう配慮する必要があります。

②施工配合の決定
処理土の室内配合試験は、ある試験条件下で発揮しうる強度の指標を与えるものであり、現地で発揮される強度を直接与えるものではありません。このため、現場条件との違いを補正する割増係数αを用いるか、もしくは、現地で試験工事を行って、施工配合を決定します。なお、割増係数αは1.1~2.6程度であり、現場条件によって割増係数を設定します(事前混合処理工法技術マニュアル参照)。

Q10.安定剤、分離防止剤の種類と選定を教えてほしい。

A10.
安定材:
安定材は埋立土砂に粘着力を付加するもので、埋立土砂と安定材の化学的反応に依存します。このため、安定材は埋立土砂に対して効果的・効率的な材料を選択する必要があります。安定材の種類としては普通ポルトランドセメント、高炉セメント、土質改良特殊セメント等があり、これまでの実績では高炉セメントB種が使われた例が多くなっています。

分離防止剤:
分離防止剤は埋立土砂と安定材の分離を抑制します。分離防止剤の種類には、アクリル系、セルロース系等の水溶性高分子があります。これまでの実績では、アクリル系が使用される場合が多いです。添加量の目安は乾燥土砂質量に対する質量比として、水道水混合の場合で40mg/kg、海水混合の場合で90mg/kg程度です。

Q11.水質管理について教えてほしい。

A11.
分離防止剤投入により、処理土を団粒化するとともに、セメントの分離を抑制し、浮遊土粒子の沈降を促進します。したがって、濁りの拡散やアルカリの溶出は比較的小さく抑えられます。
処理土投入周辺水域で若干、pHが高くなることが見受けられますが、海水は元来中和能力を持っていることから、アルカリ溶出液の海水希釈によるpHの低下により大きな問題は生じないと考えられます。施工中の水質管理は、発生源付近、汚濁防止膜内外および工事区域外の代表地点でpHおよび濁度を中心に行うことが適当です。

Q12.事前混合処理工法のコストは?

A12.
混合方法や投入・埋立方法によってコストは異なります。具体的なコストに関しては、「事前混合処理工法積算資料」を参照していただくか、会員各社にお問い合わせ下さい。

Q13.配合試験は何日ぐらい必要?

A13.
配合試験は工事に先立って行います。試料採取から7日・14日・28日強度確認および報告書作成まで約1.5ヶ月程度必要です。
使用予定のセメント及び分離防止剤メーカーの材料を用いる必要があります。なお、土質改良ですので合わせて有害物の溶出試験も行わなければいけません。